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HAC運営に関する考察

  • 2012年05月28日

HACの今後の運営に関わって、あずさ監査法人から5つのパターン別シミュレーションが発表されたことはご存じのとおりです。
道は庁内の「HAC経営検討委員会」でこのシミュレーションを基に検討を加えていますが、私なりに考えた今後のHACを含めた道内航空ネットワークのありかたについて、皆様にお伝えします。

 

Ⅰ、あずさ監査法人「シミュレーション」検討にあたっての前提要件
1、担当部局変更の必要性を協議
HACの運行は政策的色彩が濃厚なことから、所管は建設部から総合政策部に移行するために事務分掌を整備する必要がある。

 

2、増機は現実的な選択ではない。
HACの機材はSAAB340であり、この機材は既に製造中止となっている。
中古(2億円程度)は世界市場に出回っているものと思うが、増機はSAABの更新時期を考えれば賢明ではない。
また、新たな機材を導入する場合、同じくJAC(日本エアーコニューター)が保有する「ダッシュ8-400(70人乗り)」であれば、整備の支援を受けることができるが、それ以外の機種となればJACに整備委託は望めず、自前で整備を行わなければならないことから、整備士の養成や異なる部品の確保など二重の負担となる。

 

3、機材の耐用年数も考慮にしなければならない
HACが所有するSAAB機は、道の説明によると耐用年数はおよそ20年間とのことで、HAC創業の1997年から既に15年経過している。
従って、残りおよそ5~7年間(2017年~19年)で耐用年数を迎えることとなり、今後、長期にわたりHACを維持するならば新機種の導入を視野に入れなければならず、HACの将来展望に関わる政治判断が必要となる。

 

4、JACの機材変更情報
HACが整備を委託しているJACは2016年に機材の変更を予定しているとの情報が有る。
事実とすれば、16年以降2~3年で機種変更を行うと想定されるが、それ以後はJACから整備の支援は受けられなくなり、整備・部品確保も自前で行わなければならない。
併せて、機長は年2回、副機長は年1回フライトシミュレーターによる訓練・審査を受けなければ乗務資格が無くなることから、このフライトシミュレーターを用意しなければならない。
JACの機種変更で、フライトシミュレーターを譲渡してもらっても、専用の建物・空調設備・常駐のメンテナンス要員が必要となり、維持費に年1~2億円の費用の他、建設費も発生する。
従って、今後、今まで同様にJACからの支援を受けることを前提とするならば、JACと同じ機種変更か、ダッシュ8-400への更新しかない。
いわゆる、常にJACと足並みを揃えなければならない。

 

5、経営の見直しにおいて減機した場合、SAAB340の売却先?
SAAB340を売却する場合、既にJACを含めた地域コミューターが引き受けないことは容易に想定される。
従って、同機種を使用している海上保安庁など、極限定される。

 

6、アンケート調査の精度が示す限界
この度行ったアンケート調査(3日間)は回答率が43%で、この中で医療従事者の利用は各線平均6.6%となっており以外に少ない。
釧路線3人、女満別線7人、函館線20人、利尻線3人が職業欄に医療従事者と記載された方が、純粋に地域医療支援のために利用したのか、学会や会議、研究会、プライベート等で利用したのか判別が出来ない(函館線の利用が3日間で20人は多いと思われる。)。
また、HAC利用以外の乗客にアンケート調査を行っておらず、ナゼHACを利用しないのか分析が出来ない。

 

7、官と民の役割分担
行政が行う事務の基本について、知事は「民間で出来る仕事は民間へ」と行財政の見直しを推進してきた。 現在、
・女満別~札幌間(新千歳)はJAL3便、ANA3便が就航中(HAC2便)
・釧路~札幌間(新千歳)はANA3便が就航中(HAC3便)
・函館~札幌間(新千歳)はANA2便が就航中(HAC5便)
の他
・稚内~札幌間(新千歳)はANA2便が就航中
・根室中標津~札幌間(新千歳)はANA3便が就航中
HACが就航している女満別、釧路、函館についてはJAL及びANAによる代替え増便が可能であり、実質官製航空会社であるHACが就航を続ける意味は薄い。

 

8、搭乗率の換算
SAAB340機の定員は36人であり、搭乗率は1人で約3%となる。
従って、損益分岐点の51%は一人減るだけで48%となる。

 

9、HAC職員の不安
昨年からの経営不安で、HAC職員に動揺が広がっている。
パイロットも高齢化しており身体検査基準も厳しくなることから、若いパイロットの養成も必要となってくるが、整備担当者も含め、先行き不安なHACよりも、路線拡大で華々しいLCCの人員採用増などが気になっており、人員不足に陥ることも現実的な課題であることを認識しなければならない。

 

 

Ⅱ、前提要件を踏まえての「シミュレーション」分析
1、①案について(1機体制予備機無し、運営は他社に委託、離島路線に特化、丘珠~函館は1便存続)
1機体制でのシミュレーションで、所有しているSAAB2機を売却するとのことだが、SAAB機を使用しているのはJACのみであり、機材は充足しているため、売却には応じる可能性は無いに等しい。
また、函館線を1便にするのは奥尻線のためのようだが、1便にしたところで残り4便分の客が集中するわけではなく、逆に他航空会社に流れることが容易に想定され、この1便も赤字要因となり、この案で他社に委託してもシミュレーションにあるような財政負担は免れない。

 

2、②案について(3機体制、女満別線の減便+収益向上策))
女満別便を減便しても上記同様に乗客は増えず、営業損失も増える。

 

3、③案について(2機体制1機を予備機、女満別線・旭川線の撤退+収益向上策)
予備機が確保されるメリットはあるが、女満別線は他社との競合で搭乗率が下がり、収益分岐点を割っていること、旭川線は土日1便のみであり赤字路線となっている。これらの廃止は収益的にもメリットが有るが、3機所有は変わらず、整備等の経費は何ら変わらない。

 

4、④案について(3機体制、女満別線・旭川線の撤退、函館線の1便増便)
③+函館線の1便増便だが、既存の12便が11便となることで機材繰りに若干の余裕が出来る可能性もあるが、欠航への具体的対処に乏しい。

 

5、⑤案について(④+三沢線の1便定期就航)
過去にJALが三沢線に就航していたが、採算性が合えば必ず他社が参入するのは航空業界の常識であり(女満別の例)、JALが撤退した経緯等の分析が必要である。
HACの機材では冬期間の防氷機能に弱点があることから、雪国の三沢線は欠航の不安がつきまとい、これまで同様に路線も跨ることから雪だるま式の欠航の解消にはならず、また、三沢線は新千歳からの競合も無く独占路線となり、新たに地上業務の負担が増すことから細緻な検討が必要となる他、就航自治体としてのHACへの応分の負担をお願いできるか未知数である等の不確定要素やリスクも想定される。

 

6、①案、②案~③案、④案、⑤案についての評価
①案は多額の補助金(5億円)が必要であり、また、他社に吸収させるにしても現在の赤字を全額解消しない限り、引き受け手な無いものと思われる。
②案~③案は、シミュレーションにも記載されてるが、この計画が順調に推移した場合であっても約1億円~2億円近くの営業損失が見込まれる。
④案は赤字幅が少ないが、搭乗率の下振れで1億円の営業損失も想定される。
⑤案は女満別が三沢に代わっただけであり、HACには博打をする体力はないはずである。

 

Ⅲ、結論
1、以上、「検討にあたっての前提要件」や「シミュレーションの分析」から、同型機を所有する航空会社(JAC)に早い段階で委託し、所有する機材を受託先の航空会社(JAC)に譲渡または格安で販売し、乗務部門や整備部門も提供する。
委託:受託の関係は、路線確保の知事発言、行政の関わりから、委託=北海道、受託=航空会社(JAC)とする。
補助金は、
①搭乗率補償制度の導入→丘珠~函館線の場合、例として60%の   搭乗率 を下回った場合に不足分を受託先に補償する代 わり、上   回った場合は委託先に支払う等の契約を 行う。
(搭乗率が安定してきた場合は制度の見直 しを行う。これは、女満   別線、釧路線おける民間 航空会社の便数確保にも応用可能)
②離島路線→赤字補填をする。

 

2、路線については、奥尻線、利尻線を存続し、黒字路線である函館線を現状及び1便程度増便して運行、北海道新幹線函館開業を見据えても、札幌へ短時間で移動できる航空機の用途は、今後、新幹線が札幌まで延伸する間の約20年間、利用が拡大するものと推察される。

 

3、函館~旭川線は中核都市間の土日のみの運行であり、観光の要素が強いことから公共性が低く、さらに搭乗率も低いことから廃止する。

4、女満別、釧路に関わる医療への貢献については、JALやANAの民間機で対応可能と考える。

5、HACは丘珠~函館線、離島航路の運行支援、旅客・手荷物等のハンドリング業務及び、航空券の販売、旅客乗務員の派遣等を行う地上支援会社として存続させ、委託先の航空会社との間で契約を結び、安定した収益を上げることで、将来的には、道内各空港運営会社との合併も視野に入る。

 

6、以上が、離島及び医療の公共性確保、税の投入を最小限とする経済性と採算性を確保した道内航空ネットワークの維持、という事業性も考慮したHACの現実的な対処であり、これ以外の手段は無いものと考えることから、出来る限り早い段階で道が委託化を判断し、道民理解を得、誠意を持ってJACと交渉を進め、離島と利用率の高い路線を確保すべきである。

 

少し長くなりましたが、これが、航空関係者や旅行関係者など様々な方からの意見を参考にした私の考え方です。
相当過去には地域コミューター構想が有り、極端な話、農道を滑走路にしてまでも航空機を飛ばそうという機運がありました。
HAC設立当時は、高速交通網の過疎地帯への対処としての位置付けもありましたが、今は、高速道路や高規格道路網も延長されてきており、大分様相も変わってきたました。これからは、「有れば便利」というだけでは存続させることができない時代であることも考慮しなければと思います。


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