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黒い雨判決に国が控訴

  • 2020年08月12日

 先日、広島地裁が下した「黒い雨訴訟」の判決は、長年にわたり原爆による後遺症に苦しめられてきた原告団に明るい希望を与えてくれましたが、国は即日控訴を検討するという極めて人間性を疑うコメントを発出しました。

 原爆投下直後、爆心地を中心に広範囲にわたって降り注いだ高濃度の放射性物質を含んだ「黒い雨」、多くの県民は高熱の放射線や爆風を浴びた後、この黒い雨に全身を包み込まれました。

 国は、一定の範囲に限定した場所を「特別区域」として、爆心地から北西側に19kmの楕円形の範囲を指定して、無料の健康診断や一部被爆手帳の発行を認めてきましたが、区域以外でも黒い雨を浴びながら国の援護対象外とされていた原告84人に対し、司法である地裁が「これまでの政府の姿勢について吟味する必要がある」と指摘し、「黒い雨の降雨域はより広範囲で、原告らはいずれも暴露したと認められる。原爆との関連が想定される疾病にも罹患しており被爆者援護法の対象に該当する」として原告全員に被爆者手帳の交付を命じました。

 被爆者援護法は、被爆者の利益に立って幅広く救済するというのがその理念です。

 にも関わらず、なぜ、国は控訴しようとしているのでしょうか。

 広島県と広島市も、この間、特別区域を現状の5ないし6倍に広げるように国に求めていました。

 12日が控訴期限とされていた今日、国は控訴する方針を固め、広島県および広島市が国の方針を受け入れることになりました。

 県と市は、先ほども記載したように原爆の被災地であり、この間、特別区の拡大を国に求めていたいましたが、たまたま、厚労省が主管する被爆者援護法の実施自治体として「法的受託事務」を行っていたにすぎません。

 原告も、訴訟上、法的受託事務を行っている県と市を被告とせざるを得なかった事もありますが、県と市が控訴をすべきでは無いと表明していたにもかかわらず、補助参加である国が控訴できる立場を利用して、自治体に対し控訴を強要するということは、国と地方の対等関係を明記した地方分権一括法を踏みにじる行為ですし、何よりも長年、原爆に起因する疾病に苦しんできた原告の希望の火に冷水を浴びせる非道の行為ではないでしょうか。


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