米国の医療は(ブログ3974)
- 2025年07月15日
世帯的にも、国内でもトランプの虚勢もだんだん効かなくなってきたのではないでしょうか。
トランプの新しい政策は、富裕層を意識した減税ですが、これは米国の債務増大に直結する危険性を内包しています。そして、トランプはその穴埋めを国民の健康保険である「メディケア」に求めようとしています。
持てる者と持たざる者、つまり富裕層と低所得者の分断は米国において深刻なものとなるでしょう。「今回の富裕者層の減税は、低所得者層への死刑宣告だ」左派のバーニー・サンダーズ上院議員は、批判を強めています。
米国の債務は36兆ドル(今日のレート1ドル約147円で)、日本円では5,292兆円を超えていますが、この減税で今後10年間でさらに債務は3、4兆ドル(499兆円)拡大する事になります。
一方、この10年間で約1,700万人が無保険者となってしまいます。また、貧困線付近の所得層(年収3万2,000ドル:470万円~4万4,000ドル:646万円の4人世帯)への給付要件の厳格化がなされる他、半年ごとの資格確認の義務化で自動加入制度が廃止となり、更新を忘れたら最後保険を失う事になります。併せて65歳未満の成人に対して毎月80時間以上の就労・ボランティアが義務づけられ、全ての年齢のトランスジェンダーに対する性別移行医療の不支給、中絶を提供する医療機関へのメディケイド(低所得者対象の支援プログラム:州が主体)からの全額支払い停止、これらで、下院案では今後10年間で医療機関の収入は3,840億ドル(56兆4,480円)の減収が見込まれていますが、上院案では、さらに3,750億ドル(55兆1,250億円)のメディケイドへの支出削減が盛り込まれ、地方病院への影響が懸念されています。
高齢者の医療費はメディケア(65歳以上と障がいを持つ人に提供される医療保険:連邦政府が主体)が負担しますが、長期介護(ナーシングホームなど)は対象外で、代わりにメディケイドが全米の介護施設入所者の60%以上を支援しています。しかし、共和党案では、介護施設が州に税金を納めメディケイドから交付金がとして戻る仕組みに制限を加えることになり、以後、施設の新規受入が困難となって低所得者が施設を探せなくなります。
この減税を「一つの大きく美しい法案」とトランプは自慢していますが、その中身は、メディケイド受給者・低所得者・地方病院・高齢者など社会的弱者に犠牲と自己責任を強いて、富裕層を優遇する制度です。
日本でも、高齢者への医療費の自己負担増や、年齢に関係なく高額療養費の支給見直し、終末医療の自己負担などを主張する政党が今回の参議院選挙でも声高に叫んでいます。
トランプの政策がジワジワと日本にも影響を与えていますし、大学病院を含めた多くの病院が赤字となっている現状から、大胆な医療改革を求める勢力も出てきています。
しかし、医療は、単なるコストではなく国家・社会形成の根幹を成す重要なインフラなのです。米国でのトランプ減税は、米国の最後の始まりとなりそうです。
国民の反トランプへの怒りは、政権転覆まで行くかもしれません。