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国際海洋法遵守と沖ノ鳥島

  • 2016年08月13日

 岸田外相が、フィリピンを尋ね、ドゥテルテ大統領と会談し、中国の南シナ海での主権主張に対しフィリピンが提訴した「仲裁裁判所」の裁定の尊重と、国際法の遵守を、共に中国に求める考え方を一致させました。

 これは、日本にとって尖閣諸島に対する中国政府の実力行使に対し、同じ懸念の共有を求める外交手法ですが、フィリピンは表面上の日本との握手とは別に、必ずしも全面的に協調すると言うことではなく、「同床異夢」の面も見え隠れしています。

 6月に就任したドゥテルテ新大統領は前アキノ政権とは違い、経済支援や共同開発で中国とも手を結びたいことから、必ずしも日本と共同歩調を取るとは限りません。

 そして、中国は、この仲裁裁判所の裁定を守る考えなど微塵もありません。

 国際海洋法の仲裁裁判所が下した主な判断は、

 《九段線》

 中国が独自に引いた「九段線」で囲った海域に、歴史的権利が有るとの主張は法的根拠がない。

 《EEZ》

 南沙諸島には法的に(島は存在せず)岩しか存在せず、EEZ(排他的経済水域)を設定できない。

 《環境破壊》

 中国は海洋環境保護に関する条約義務に違反し、埋め立てや人工島造成を行い、南沙諸 島の生態系や珊瑚礁に取り返しの付かないほどの甚大な損害を与えた。

 《不当行為》

  フィリピンの油田探索や、伝統的な漁業権利を不当に妨害した。

 中国は公船が海洋の安全に関する条約義務違反し、フィリピン船への危険な接近を繰り返した。

 仲裁手続き中も人口島の造成を中断することなく、対立を悪化させることを避ける義務に違反した。

 などですが、この裁定を受けてすぐに「紛争当事国は裁定の受け入れを」と主張した米国自身も、海洋法を未だに批准しておらず、ハーバード大学のG・アリソン教授は「海洋法の成立以来、常任理事国が自らの主権や安全保障上の国益に関わる問題において、国連決議を受け入れた事例はなく、中国も、米国を真似て裁定を拒否するだろう」と述べています。

 常任理事国(米国、英国、仏国、中国、露国:戦勝国)とは、自国の利益のために他国の主張を受け入れる等ということはあり得ないという傲慢な大国なのです。

 従って、米国の言うことは全くのポーズでしか有りません。

 尖閣諸島に関する米国の見解も、「日本の施政権は認めるが、特定の立場は取らない。」というものです。

 今回の仲裁裁判所の裁定で、日本が最も気にしなければならないのは、《EEZ》に書かれている「岩」の定義ですが、海洋法第121条第3項にてらすと南沙諸島は「島」ではなく、「岩」ということになり、EEZが設定できないと結論づけていますが、これに当てはめると「沖ノ鳥島」は「岩」と言うことになり、東京都が石原知事時代、約800億円もの血税を投入して「波消しブロック」の人工物を作りましたが、当然、EEZは設定できないことになります。

 海洋法を遵守すべきと主張している安倍晋三は、この結末についてどのように対応するのでしょうか。


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