世界は大きく変化する(ブログ3910)
- 2025年05月05日
トランプ氏の登場と、その独裁的政治手法に対し、最近多くに識者がこれまでの世界の有り様と全く違う近未来が進み始めていることを指摘しています。
2日の道新では、仏歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏が<トランプ政権というのは、米国の内部崩壊の一つの段階だと思う。私たち欧州人と日本人は、米国の民主党と共和党の政権交代を余りに重大にとらえているが、米国は政権党に関係なく継続する特徴が有る。(伝統的秩序や価値を否定・破壊する)ニヒリズムと退廃的な要素だ。バイデン氏はウクライナ戦争では好戦的だった。トランプ氏は、同盟国と敵対する衝動に駆られている点では極めて暴力的だ。問題は民主党か共和党かでは無い。米国なのだ。
保護主義の導入とはグローバルな視点を持たず、米国の国益だけで関税を発動するやり方で狂気の沙汰だ。トランプ氏はひらめきはあるが本質を理解していない。19世紀のドイツの経済学者リードリヒ・リストは、保護主義を成功させる条件の一つに国内で代替財を製造する十分な労働人口を挙げたが、米国社会の構造は高学歴ではない層の大半がモノを作る労働者では無くなっている。トランプ氏にとって問題は、モノを生産する労働者層復活の道筋が見えない事だ。これは、1930年代のナチズムを想起させる。ナチズムは労働者というより、人種的優越の熱狂に駆られ、自分達こそ支配者だと思い込んだ中間層主体の運動だった。そして大衆層は力を失った。トランプ主義も最終的には、大衆層を裏切る方向へ行くだろう。
米国における新たなプロセスは始まったばかりだが、私たちはゆくゆく想像も及ばないことを目撃するだろう。目の前の恐ろしいミステリーが広がっているという考えを受け入れなければならない。(要約)>と、世界を巻き込む米国発の不安な社会への前兆を記しました 。
また、トランプ政権に強い影響力を持ち、バンス副大統領と親しい41歳の若いエコノミストのオレン・キャス氏は、<国際秩序はリセットされつつある。アメリカ側、中国側、どちらにも属さない国に分かれていく。日本は、米国か中国か選ぶ必要が今後出てくる。
米国側の経済・安全保障同盟に加わる条件は、中国を閉め出すことだ。加盟国は共通の関税障壁、投資規制、輸出管理、移民政策に合意すべきだ。
中国と自由貿易を行うということは、共産主義の優先順位や政策を、自らの社会に受け入れると言うことだ。>と話し、世界は今後3極化に向かう事を主張しています。
また、思想史家の会田弘継氏は<90年代から、民主・共和両党が推し進めてきたグローバル資本主義は、ごく一部のエリートと富裕層ばかりを儲けさせ、中間層・下位層をむしろ貧しくし、米国の国力を損なった。普通の労働者に報いる事こそ、米国再興の道だ
と、キャス氏は考えている。グローバル化こそが米国を破壊したという米国庶民の深い絶望が横たわっている。つまり、大都市以外に住む工場労働者や軍人は、グローバル化に取り残されて貧しくなり、窮状を訴えても「能力が低いからだ」「学歴が無いからだ」と切り捨てられてきた、トランプ政権とその政策は、彼らの怒りが生んだものでそう簡単には覆らない>と分析しています。
そして、哲学者の内田樹氏は、キャス氏と似たような視点を話しています。<日本の選択肢はいくつかある。まず、米中いずれかの辺境の属国として宗主国に「朝貢」して生き延びる道である。
日本は戦後80年米国の属国として生きてきたから属国マインドは日本の政治家・外交官たちに深く内面化している。米国の西の辺境として生きるのを止めて、中国の東の辺境となる道を選ぶことに日本人はそれほどシリアスな心理的抵抗を感じていないだろうと思っている。卑弥呼の時代から徳川将軍に至るまで、日本の支配者達は「中華皇帝」から形式的には官位を冊封されていたのである。中国が属国日本に天皇制と民主主義政体を許可すれば(しないと思うが)、宗主国を米国から中国に替えることに抵抗はしないだろう。なぜなら日本の支配層は「強者への従属が自己利益を最大化する」と信じている。
もう一つの道は、日韓同盟である。米軍が撤収した日本と韓国が同盟するのである。
人口は1億8千万人、GDP6兆ドル、ドイツを抜いて第3位の経済圏になり、軍事力はインドを抜いて世界4位。この日韓同盟は米中と等距離外交を展開する。西太平洋に広大な中立地帯が出来る、東アジアの地政学的安定を国際社会は歓迎するだろう。
さらにもう一つは、憲法9条2項を高く掲げて「東洋のスイス」のような永世中立国になる事である。日本は間違いなく医療と教育と観光・エンターテインメントでは世界のトップレベルにある。そうやって全世界に「日本で暮らしたい」という人々を創り出す。それが「アセット(資産)」になってくれる。スイス銀行に個人口座を持っている人たちが(テロリストも含め)「スイス侵攻」に反対する理屈と同じである>と日本の行く道を示唆しています。
多くの知識人が、米国の鬱積の中で必然的にトランプ氏が出現し、その政策を米国の中間層・下位層が支持していることが今後も続くとしたら、世界は、これまで想像したことも無い方向へ急速に進み始めることを予感し、日本がどの道を選択するのかを注視しています。私も数年後の日本がどのような方向性を見いだして国際社会に対応して行くのかが心配です。少なくとも、今の国際ルールが温存されることはなさそうです。
選択肢の中で、内田樹氏が最後に示した永世中立国が理想だと思いますが、それも許されないのなら、日韓同盟なのかもしれません。
そしてもう一つは、G7から米国を除いた、日本、カナダ、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ+EU(欧州連合)、の経済圏とNATO(軍事同盟)を選択するか。
いずれもリスクが伴うかも知れませんが、ドラスティックな判断も必要なのかも知れません。