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ホテルが北電を提訴

  • 2019年10月11日

 ブラックアウトの責任を問う訴訟が起こされました。

 オホーツク管内斜里町の「知床第1ホテル」が北電に対し、ブラックアウトにより、想定を越えるキャンセルが起き、多大な損害を受けたことは北電が苫東厚真火発に発電を依存し集中していた。その上で電源の分散など自然災害を想定しての対策が不十分であった。と言うことが提訴の理由です。

 北電が自然災害を何処まで予測できたのか、電力の厚真火発への集中は適切だったのかなど、専門家もホテル側が北電の過失をどこまで立証できるかハードルは高いとしていますが、昨年の胆振東部地震における北電の賠償責任について「ブログ1641 18年10月 7日 北電の賠償責任」に記載しましたので、少し長い文章ですが、再掲します。

 

<○北電の賠償責任

 コープさっぽろが、胆振東部地震によるブラックアウトの影響で、冷蔵・冷凍庫の使用が出来ず、その結果、取引企業等を含めた被害総額が9億6,000万円に上ると算定、その損害賠償を北電に求めることを理事会で決定したとのことです。

 このことをきっかけに、多くの業界が追随することは避けられないでしょう。

 他のスーパー・コンビニ、飲食業、水産業、酪農業などの食糧関連業界、観光に関わる全ての産業、医療・福祉関連、社員の通勤が不可能となり休業せざるを得なかった企業、各種イベントの中止で損害を被った関係者、数え上げればきりがなく、当然、各家庭の冷凍庫・冷蔵庫の中に保存してあった食品も含まれるでしょう。

 ブラックアウトにより想定される被害額は数兆円とも言われています。

 北電は、顧客と「自然災害における損害賠償については免責される」という契約約款を結んでいるとして、これまで損害賠償に応じたことは有りませんでしたから、これらの賠償を北電が認めるわけもなく、国の検証委員会も今月内にまとめる中間報告では、当初から北電の経営責任に言及することはしない方針です。

 しかしコープさっぽろも、賠償請求の決定に至までには当然のこととして弁護士とも相談しているはずですし、損害額についての和解や損害賠償請求がスムーズに行かない場合の訴訟ということも視野にいれているものと思います。

 今回のブラックアウトについては、その初期から経産省が全面に立ち世耕経産相が北電に対しての指示を行ってきた経緯が有ります。

 当然、我が国のエネルギー供給を所掌する省庁ですから、北電の厚真火発に偏った発電システムについて容認してきた事も有ってのことだとすれば、この損害賠償責任については国の責任も追及されなければなりません。

 しかしながら、検証委員会は責任の判断は国に委ねるとしていますから、その判断は国が行うことになりますが、国は、自然災害であるとし、国も北電にも賠償責任があると認めないでしょう。

   一方、これまでの新聞報道や、有識者の見解は、コストを重視した厚真一カ所への発電の偏重、ブラックアウトを予見しながら対策を取らなかった運営の甘さ、福島原発事故を教訓とした発電の分散化を生かしてこなかった経営陣の怠慢などを指摘していますから、北電のみならず、監督官庁としての経産省もその責任を逃れることは出来ないと思います。

 電力会社は、如何なる場合も電力を安定供給する義務を負っています。

 だからこそ、私たちの支払う電気料金には一定の経営利益分が付加されており、さらに、再エネ発電付加金まで設定され、自分たちが使用する電気料金以上のお金を支払っています。これは他の企業には無いことですし、さらに国によって電源三法による交付金や核燃料処理に関わる負担まで税で補われています。

 したがって「自然災害だから仕方がない」と逃げることは許されずはずもありません。

 北電と経産省は自らの責任において、損害を被った全ての関係者に謝罪すると共に、損害賠償を真摯に検討すべきではないかと思います。>

 

 1年前には、コープさっぽろも損害賠償を北電求める事を理事会で決定していましたが、組合員からの声で提訴を断念しました。

 しかし、北電は、自らの責任について明らかにすることなく、また、損害を被った方々に誠意を込めた謝罪をしたとは思えません。

 今回の知床第1ホテルの提訴は、これまでの経過を十分に検討した上で勝機があると判断されてのものだと思いますが、東電の経営陣が、政府地震調査研究推進本部の示した津波予想とそのための津波対策を現場から進言されていたのも関わらず、何も手を打たなかった結果、あの未曾有のフクシマ原発事故が起きましたが、それでも、司法は無罪を言い渡しました。

 電気は公共財の一番重要な部分を担っています。

 電源供給を担う電気事業所はそのことを十分に認識し、この訴訟については丁寧に応じて欲しいものだと思います。


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