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ペトロダラーシステム(ブログ3902)

  • 2025年04月27日

 ペトリダラーシステム、この言葉を聞いたことのある方は相当の経済通だと思います。

 私も、この言葉を知らないままに毎日を過ごしてきましたから、初めてJBプレスで農業研究者の篠原 信氏の文章を見たときは、なるほどと思ってしまいました。

 その中身を要約しながら掲載します。

 ニクソン大統領が登場する前まで「ドル」はゴールド(金)と交換する事を約束された「金兌換紙幣」と呼ばれるものでした。つまり、ドルを持って銀行に行くとゴールドの塊と交換してくれる約束があるから、ドルという紙切れがお金として信用されていました。

 ところがニクソン氏が1971年8月15日に「ドルの金兌換制を止める」と宣言、これをニクソンショックと言います。当然、ゴールドと交換できなくなったのですからドルは信用されなくなります。ニクソン氏の大統領補佐官や国務長官だったキッシンジャー氏は、ゴールドに変わる石油に目を付け、世界中どこに行っても石油はドルでしか買えないいわゆる石油兌換券としてのシステムをいつの間にか構築していました。

 そうなると日本のように石油資源がない国は、米国に自動車や家電などを輸出してドルを手に入れなければ、石油は確保出来ません。手に入れたドルで中東等の石油産油国から石油を買い、その石油エネルギーで自動車や家電を製造するという経済循環が出来上がりました。米国はドルを印刷するだけで、世界中のあらゆる商品が手に入ったのです。

 このシステムには、産油国であるサウジアラビアの力が大きく、米国は、そのサウジに強大な米軍を駐留させていたことでサウジの支配者は支配者でいられることになり、この
石油とドルが深く結びついた世界経済システムを「ペトロダラーシステム」といいます。

 しかし、この構造はイラクのフセイン大統領によってほころびを生ずることになりました。

 米国は、ニューヨークの世界貿易センター、同時多発テロを実行したアルカイダとイラクが繋がっているとし、さらにイラン・イラク北朝鮮が「大量破壊兵器」を保有しているとして「秋の枢軸」と呼び、国連を通じて大量破壊兵器の廃棄を求めましたが、フセイン氏はこれに応じず、米国と数カ国の有志軍との間でイラク戦争が勃発したという背景があったこともあり、フセイン氏は「今後は、ドル以外にも、ユーロや円でも石油を売る」と発言、そうなれば石油兌換券としてのドルの地位は失われる事になります。

 イラク戦争が終結しても、クエートやベネズエラ、ロシア等がドル以外でも石油を売るようになってしまいました。

 石油は、採掘する、油井を掘り下げる、原油を運ぶ、精製する、また消費地に運ぶ、ガソリンスタンド等のコストがかかります。石油にかかるエネルギー消耗のコストの何倍もの採掘が出来るかは、EROI(Energy Return on Investment)という数値で表します。

 地面に穴を掘るだけで石油が湧出した場合はEROIは200倍ほどでしたが、近年のシェールオイルの場合は、地中深く高圧の水を注入して石油を搾り取る技術で、EROIは7~10倍に低下してしまいます。そしてEROIが3倍を切るとエネルギーとして意味をなさなくなります。いくら埋蔵量が豊富でも、掘れば掘るほど赤字となります。

 一方、世界は脱炭素、CO2削減で化石燃料から再生可能エネルギーに大きく舵を切っています。EROIが低下しつづけているのであれば、ペトロダラーシステムは維持できなくなります。トランプが、温暖化などフェイクだ。石油を掘って掘って掘りまくれと叫ぶのには、ドルの信頼を今以上の低下させないようにという意味があったとも考えられます。

 このペトロダラーシステムに代わるシステムが構築されないのであれば、いよいよ自国内で物資がほぼ完結できる米国は、1800年代のように他国との干渉を拒否する「モンロー主義」に回帰するかもしれません。その政策の方向性が、いま行われている「自国主義(MAGA⇒メイクアメリカグレートアゲイン)」であり、具体的な移民・難民の強制退去、世界警察からの脱却、保護貿易化、高関税、リベラルの排除、なのかも知れません。


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