プルトニウムはどうなる(ブログ3961)
- 2025年07月02日
毎日新聞が特集を組んでいる「迷走プルトニウム」という取材記事が、日本のMOX燃料について重要な示唆をしています。記事を要約して再掲します。
【英国はイングランド北西海岸のセラフィールドに再処理工場を建設し、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出してきた。当初軍事目的だったが民生用に拡大、日本を含む西側諸国からの再処理をフランスと共に担ってきた。
英国は、分離したプルトニウムを効率よく燃焼させる高速増殖炉を開発して利用する計画だったが、その原型炉「PFR」が事故を起こし、後に廃炉になるなどで開発を中止。
伴ってセラフィールドの再処理工場も2018年に操業を停止、現在再処理が出来ない状況となっている。一方、分離し国内保管をしているプルトニウム120tをどうするか。
かつてはプルトニウムとウランを混合して「MOX燃料」を作り、原発で燃やす日本の「プルサーマル発電」と同様な計画を立てたが、「MOX燃料は経済性が悪い」、「工場建設の費用が高すぎる」事も判明、英国で原発を所有するフランスの子会社も同様の理由で興味を示さなかった。
その結果、プルトニウムと何らかの物質を混合して分離できないように固形化した上で、地下深くの地層施設に最終処分するとの結論に達した。
米国もMOX燃料で燃焼させる計画だったが、工場建設と操業費用が当初計画の10倍近くに膨らむため、断念、米国も英国同様に、謎の物質「スターダスト」と混合し分離を困難にした上で、地中深く処分する計画。米英の考え方は共通している。すなわち、コストや核拡散を考えた場合、“プルトニウムをゴミ扱いをせざるを得ない”と判断している。
英国がセラフィールドに保管しているプルトニウム約141tのうち、21.7tが日本の所有分だが、今回の地中処分の対象には含まれていない。日本は、使用済み核燃料は必ず再処理し再び原発で利用するという「核燃料サイクル」を国策としているが、英国で再処理したプルトニウムのデーターが捏造されていることが発覚、英国にある日本のプルトニウムは宙に浮いたままだ。一方、英国に1.58t分を保管しているイタリアは、90年までに原発を全廃、英国に費用を払って地層処分をしてもらう方針だ。英国の大使館は「日本もお金を払えばプルトニウムを引き取り、英国分と一緒に処分してもいい」という姿勢を示している。】と掲載。
元原子力委員会委員長代理の鈴木辰治郞・長崎大客員教授は、「MOX燃料は加工費などの高さからマイナスであり、イタリアの選択は安全性、経済性、核セキュリティーの面で有効。日本は国策に固執してプロトニウムの地層処分を受け入れないかもしれない。しかし、英国に処分を委託する方が合理的だ」と話しています。
日本の場合もプルトニウムを再利用する高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が18年に決定し、再処理工場も完成が何度も何度も先送りとなっており、核燃料サイクルは事実上破綻していル事は周知の事実です。また、全てを燃焼させる「フルMOX」を目的とする大間原発は、建設が休止したままで再建の目処も立っておりません。
先般、規制委が大間原発を視察したようですが、数年前に私が視察したときは、原発建屋の鉄骨は潮風を含む風雨に晒されて鉄骨が錆び、その錆びた欠片が地面に落ちていました。フルMOXがダメでも、プルサーマルで稼働させたいとする政府。
政府は使用済み核燃料の今後をどのように描いているのでしょうか。