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桧山の洋上風力発電(ブログ3930)

  • 2025年06月01日

 28日の道新に掲載された特集「洋上風力 乙部の苦い空白 ~隣町江差に風車 体調不良続出 町は推進協離脱~」には、現在進行中の桧山の日本海側で計画されている洋上風力発電から離脱した乙部町の事が分かりやすく記事になっていました。

 ご覧になった方も多いと思いますが、要約すると、既に陸上風力発電が乙部町と江差町の境界近くに建設されており、その付近で農作業をしていた乙部町の住民が、ブレード(羽)の風を切る低周波で頭痛やめまいで働けなくなり、その後もこの場所での農作業で同じ症状がくりかえされたことから耕作を諦めてしまいました。そして、同じ症状が他の住民にも表れました。また、風力発電の部材を運び入れる道路が乙部町の町道だけしか無く、そのため町道の運行を許可しましたが、当時乙部町長だった寺島氏は、当時そのことが分かっていれば判断しなかったと話しています。そして、乙部町では「風力発電を考える町民の会」が立ち上がりました。しかし、業者は「低周波が原因の健康被害は報告されていない」と一蹴。その後、乙部町は促進地域における洋上風力発電推進協議会から離脱しました。

 5月初めに、私が別件で乙部町を訪れた折に副町長へ「なぜ、乙部町は推進協に入らないのですか?。」とお聞きしたら、副町長は、「乙部町の特徴として、海岸からいくらも離れないうちに海が深くなることから、着床式の風力発電が目の前に建設されれば、健康被害が心配だから」と話されていました。副町長は多くを語りませんでしたが、離脱の判断には陸上風力による低周波被害という伏線があったことを今回の記事で知りました。

 その時に、浮体式であれば20km以上沖に設置することも可能で、低周波も心配ないのではと話してきましたが、乙部町は先ずは住民の健康を一番に判断されたようです。

 さて、3月の道議会定例委員会で、私は、これからの洋上風力発電に関わる質問をしましたので関係部分だけ再掲します。

離岸距離について

 100万kwの原発の建設費には1兆円超えの建設費が必要になり、建設開始から完成まで約15年かかるのが一般的ですが、洋上風力発電は1.5万kw風車で1基約30億円、100万kwでは70基が必要ですが、約2,100億円で5年以内に完成します。

 無論、風力発電も地元の理解が必要ですし、さらに工事までに年月が必要だと思います。

 さて、2024年現在、世界最大の風力発電プロジェクトであるイギリスの「ドッガーバンク・プロジェクト」では、1.3万kwを277基で360万kwをめざしますが、この風力発電は、離岸距離が140kmとなっています。

 台湾でも1.4万kw風車を73基建設する「ハイ・ロン・プロジェクト」が彰科県沖45km~70kmの海上で建設されています。

 世界の標準離岸距離は22.2kmで、EUや米国はこの標準離岸距離を取ることが常識となっています。 石狩湾新港には14基の洋上風力発電が稼働していますが、この施設の離岸距離は1.6kmとなっており、対岸の小樽からもきっちりとその存在感を示しており、低周波が心配です。

低周波について

 政府は、風車から発生する超低周波音・低周波音と健康影響については明らかな関連を示す知見は確認できないとし、日本の基準として「残留騒音+5デシベル」と言うことにしています。つまり、現在の日本は、風車騒音の規制値が無いと言うことに等しいと言うことになります。

 国内でも1,000人規模の風車騒音による睡眠障害の疫学調査を3年がかりで行った結果、風車騒音が41デシベルで不眠症を訴える人が5倍以上の確率で増えるという論文が国際的な科学誌「ノイズ&ヘルス」で発表されました。

 風車先進地のデンマークでは40デシベル、イギリスでは41デシベル、ドイツでは43デシベルなどを基準としています。

 「HーRISK」というシミュレーションソフトが開発されましたが、離岸距離が2km以内の山形県遊佐町の1.5万kW30基の計画では、睡眠障害が発生しそうな地域に6,300人が居住しており、その中の151人が不眠症になる可能性が指摘されています。

 日本総合学術研究集会では、1万kW風車1基では8kmが、1.3万kWでは最低でも10kmの離岸距離が必要と発表されました。>さて、質問の答弁は曖昧なものでしたが、着床式で離岸距離が短いだろうと推察される檜山管内の風力発電、今は、計画の詳細が明らかになっていませんのでどの程度の離岸距離になるか分かりませんが、離岸距離に重きを置いて考えなければならないのは明らかです。

 その結果として、推進協を離脱した乙部町の判断の重さが、証明される事になるのではないかと思います。


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