核の威嚇を要請(ブログ3995)
- 2025年08月05日
自衛隊と米軍が昨年2月に実施した「台湾有事」想定の机上訓練を行いました。
この演習は、米海兵隊が鹿児島、沖縄両県の南西諸島に臨時拠点を設けて分散展開し、自衛隊は後方支援を担当するという想定でしたが、最終盤で中国の指導者が日米に核兵器使用をほのめかすというストーリーとなり、事態がエスカレートすることを危惧した米側は、当初慎重姿勢で具体的な対抗措置をとりませんでした。
しかし、防衛省制服組のトップである吉田圭秀統合幕僚長(統幕長)が「日本防衛のため、米軍も核の威嚇で対抗して欲しい」と繰り返し求めた結果、米軍側も最終的に応じたということです。
台湾有事を想定した机上演習ですから、当然仮想敵国は「中国」と言うことになります。
自衛隊が、米軍と共に仮想敵国を中国に限定し、実際の地図を使用して従来より格段に実践的な演習を行ったということです。これは従来になかったことで、中国を無駄に刺激することになりますし、その後、領空で中国軍が自衛隊に異常接近をしたり、領海では意図的に領海侵犯を繰り返したりという行為が行われました。
もう一つの大きな問題は、世界で唯一の被爆国の自衛隊が、米軍に対し核による中国への威嚇を再三にわたり要求したことです。
日本は米国の「核の傘」に入っているという現実はありますが、ことは最終戦争へ繋がる核に関わる判断です。この演習で核威嚇を要請する可能性が出てくる事を防衛相は承知していたのでしょうか。了解も無かったとすれば、制服組がエスカレートして核にまで言及したと言う事になります。仮に防衛省を通じ最高司令官である首相が承知していたとしたら、シビリアンコントロールにも大きな落とし穴があるということになります。
日本は唯一の被爆国として核を持たない事を国是としてきました。その一方で、同盟国である米国の「核の傘」に入ることを選択しましたが、その核の傘に止まるだけでは無く、核を主体的に威嚇の手段として利用する国へと変貌しようとしているのでしょうか。
今回の問題について、被爆地である広島、長崎からは、「核を使用する気が無ければ想定なんかしない」という抗議の声が出ているのも至極当然だと思います。
参議院選挙で当選した参政党の議員は、「日本が核武装するのが一番効率的だ」と話しています。この方は核についてどのような認識を持っているのでしょうか。危険な議員だと思います。
これまでも言われてきたことですが、仮に中国と台湾の間に有事が発生すれば米軍が軍事介入することが想定されます。それは核保有国同士の大規模な戦争に発展することになるでしょう。そうなれば集団的自衛権を行使して自衛隊が参戦するということになります。
これは、何としても避けなければなりません。日本も米国も、台湾は中国の一地方であることを認識しています。つまり有事とは内戦と言うことになります。ここに軍事介入すべきかどうかは、おのずと明らかです。中国を仮想敵国としての机上演習の行く先には、日本の破滅が待っていると考えるべきです。