原発の延命(ブログ3917)
- 2025年05月13日
原発の60年超運転を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が6月に全面施行されます。
これによって、これまで40年とされていた原発の寿命を60年間に延長することが可能となりました。これまでの「原子力等規制法」から「電気事業法」に移り経産相が電力の安定供給などの観点から、運転延長を許可します。原子力規制委は10年ごとに設備の劣化状況や事業者の対応を確認し、規制委や経産相が認めれば上乗せが可能となります。
何だか、原発を所管する法律が、基本的に原子力を規制する「原子力規制法」から電気を事業という経済面に移行させる「電気事業法」に替え、より安全性より経済性を押し出したという感が否めません。
先ずは既存の原発ですが、フクシマ原発事故以来停止していた期間や、再稼働審査のために要した期間、更に原発訴訟で運転差し止めとなっていた期間は、当該原発の運転期間から差し引くこととなりました。国内で1番古く1974年11月に営業運転した関西電力高浜1号機はフクシマ原発事故以後12年7ヶ月間停止(24年9月再稼働)していましたから、単純に計算すると2024年-1974年≒50年となりますが、停止期間の約12年間を除けば、実質38年間の稼働期間と見なされ、これまでの耐用年数40年間で考慮すると後1年、これを60年間まで20年間上乗せをすると、あと21年間の稼働が可能で、施設は当初から計算すると70年超の72年の原発となり、2046年まで運転可能ということになります。
原発は、様々な機器によって成り立っていますが、政府が原子力規制法で40年としたのは、放射能の影響などによる機器の劣化を考慮しての耐用年数でした。
つまり、高浜原発を例にすると70年を超える運転、これに劣化した機器が耐えられるのでしょうか。事故への可能性が一層高まっていくことになると思います。
さて、泊原発1・2号炉は1984年に営業運転開始、現在41年間が経過していますが、フクシマ原発事故後2012年5月から運転休止、この間、13年が経過しています。これを先ほどの政府の方針に当てはめると、41年間-13年間=28年間と言う事になり、今すぐに再稼働と仮定して今までの40年間に当てはめてもあと12年間、60年まで上乗せを考慮すれば、あと32年間となります。2057年まで運転可能となれば、施設が稼働してから73年間の稼働が可能となります。北電は3号炉の規制委審査後1・2号炉も審査の申請を行う事にしています。今の北電の体質・体制で70年超の運転・管理はとても考えられません。
一方、経産相は原発稼働の20年間延長と併せて新しい原発の建設やリプレースも視野に入れています。しかし、大間原発を見ても新設は全く進んでおらず、新たな原発は住民理解や申請手続き、工事などで十数年から20年程度の期間が必要ですし、巨額の建設費も課題となります。何より、廃炉による解体で生じる低レベル放射性廃棄物処分場や、使用済み核燃料、核各サイクル後の高レベル放射性廃棄物最終処分場という「バックエンド」も明確な道筋が全く不明朗です。政府の示すGX脱炭素電源を原発に頼るのは欺瞞に満ちた計画でしか有りません。