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優生保護とは(ブログ3256)

  • 2023年06月22日

 旧優生保護法の下で、障がいを持つ方々などに不妊手術を強制的に行った問題について、その被害実態や立法過程に関する国会の初の調査報告書がまとまり、厚生労働委員長が衆参両院の議長に提出しました。そして、この報告書によって、「子どもを産み・育てる権利」が国策によって奪い取られたことが明らかになりました。

 旧優生保護法は、1948年に戦後の爆発的な人口増加を背景に「不良な子孫の出生防止」を目的として超党派の議員立法により提案され、全会一致で成立した経過があります。

 報告書では、手術を受けたのが2万4998人で、そのうち本人同意なしは65%にものぼり、道内では2593人となっています。

 本人同意がない場合は、都道府県の審査会で適否を判断していましたが、審査会自体も開催せずに書類持ち回りで決定するなど、形骸化していたことも判明しました。

 強制手術は、身体拘束や麻酔薬使用の他、盲腸などとだましたり、福祉施設の入所や結婚の前提条件であったり、著しいのは、旧法が禁止していた放射線照射や子宮・睾丸の摘出も報告されました。

 これらのことは、1996年に法が改正されるまで続き、9歳児も手術を受けさせられるなど凄絶を極めた実態も含まれています。

 近年になって、被害者などによって政府に賠償を求める訴訟が次々に起こされたことから2019年に「救済法」が成立し、一律320万円を支給することを規定しましたが、支給認定は1000人程度にとどまっています。

 さらに、道内ではつい最近まで一部の障害者の共同生活援助事業所において、入居者の結婚の条件として「不妊手術を行うこと」が平然と行われており、道議会の保健福祉委員会でも道から報告がありました。

 「優性学」は19世紀にヨーロッパを席巻していた「科学主義(科学万能主義、科学至上主義)」から発生し、統計学上、「社会的に有益な知能や性格などは遺伝的に継承されている。」として、望ましい形質を持つ人間の数を増やし(積極的優生学)、同時に、望ましくない形質を持つ人間の数を減らす(消極的優生学)事が重要であると、いくつもの施策が提案され、優等者同士の結婚の推奨、劣等者の隔離の思想へと進んでいきます。

 米国では、1907年にインディアナ州で「断種法」が制定され、犯罪者や障がい者などが子孫を残さないように彼らの精管や卵管を切除することが初めて法的に認められ、日本でも1948年に本格的な優生政策を進める「優生保護法」を超党派の議員が提出して制定されました。

 残念ながら、この法の制定を中心的に担っていたのがリベラル勢力であり、「福祉の充実」を訴えていた日本社会党でした。その反省から救済法が出来る前年の2018年には日本社会党の継続政党である社会民主党の党首が被害者への謝罪を行いました。

 多くの反省を残した「優生学」ですが、現代では、新たな優生学が芽吹き始めました。

 「新しい優生学」は、近年の医療技術の発展によって可能になった「出生前診断」や「遺伝子治療」などによって、生まれてくる子どもの形質を操作しようとする研究や、その実践です。これらは、政府の方針では無く個人の意思や選択という、ある意味での幸福追求権がその土台にあることから、様々な議論が広く行われるべき課題だと思います。

 生殖は神の思し召しなのか、優生は個人の選択なのか。

 科学主義は常に「優」を求め、「劣」を排除しようとしますが、そこにはどんな基準があるのでしょう。科学の本来のあり方は、人類全てに寄与することであり、選別を行うことでは無いと思います。


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