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規制緩和が生んだ人災

  • 2016年01月21日

 軽井沢で起きたスキーバス転落事故、犠牲者は大学在学中の若い方々が大半でした。

 事故後、様々な事故調査が行われ、その全容が日に日に明らかになってきていますが、何せ、運転をしていた方もその同僚も死亡してしまい、当時何が起こったのかの真実に辿り着くのは至難であり、状況証拠による憶測も混在すると思いますが、早く原因を究明し、その対策を打たねば同じような事故が後を絶たないことになります。

 その原因のいくつかを考えてみますと、

 ・運転手は、当該の方は70歳、この仕事に就く前は同じバスの運転手であっても全長7mのバスしか運転したことが無く、イーエスピーではいきなり全長12mのバスを運転することになりました。大型バスの運転手に取材すると「7mと12mではまったく違う次元の感覚であり、慣れるまでは相当の実務を重ねなければ無理である」ということ。

 一般的な夜間長距離バスは運転手二人体制で目的地到着は早朝。現地で搭乗客の荷物の搬出、車内清掃、車体の洗車、食事後に仮眠しますが、仮眠の場所は車内やバスの下部にある荷物収納スペース、緊張が続いているために直ぐに寝付けず、慢性的な寝不足が続いてストレスフルな状態。

 到着時間に遅れることは許されず、運行計画以外に高速を使えば自腹を切ることになる。 賃金が安いので当然若い方は離れ、高齢者に依存しなければならない。

 今は、若者も普通免許さえ取得しなくなった等々。

 ・業界では、規制緩和のおかげで申請だけで参入が出来、1999年度の2,294社から2013年度では4,486社とほぼ倍増、過当競争が激しく業者は生き残りを賭けたコストカットに走り、過度な過労運転が常態化して倉庫のようなところにでも仮眠をさせる、高齢ドライバーを低賃金で雇う。

 国内でのスキー、スノボ人口が激減してバス需要のパイが縮んだが、中国人観光客が増えたことにより、貸し切りバスの需要が増え、供給が追いつかない。中国人は爆買いには金をつぎ込みますが、ツアー料金はけちり、現地交通費はギリギリまで削られるのが当たり前で、一時は、中国のツアー会社がバスの手配もしないまま日本に来て、日本のエージェントに「契約に無くても移動するバスを用意するのは当たり前だ」と無理を通したこともありました。従って契約数は増えても収益が上がらない。一方、国はインバウンド政策を強め、国内業者に求めてくる。業者は国が定める最低賃金さえも守れない等々。

 ・バス会社イーエスピーは、運転手に健康診断も受けさせておらず、朝の点呼も実施せず、発着地やルートなどを記す「運行指示書」も作成せずと、数々のずさんな管理が発覚、国が定めた最低基準額約26万円を7万円以上も下回る約19万円で請け負った等々。

 様々なことが原因として出てきますが、根本は人命を預かる輸送機関を規制緩和し、競争を煽ることで過当競争を招き、上記のような事態を招いたことではないでしょうか。

 今回の事故の根本は、まさしく過当競争という規制緩和を行った政策であり、「人災」で有ることに間違いはありません。

 そして、今回の軽井沢の事故後も相次いで大型バスの事故が起きています。

 人命を運ぶバス、そしてタクシーも含めた規制緩和は、これを機会に大きく見直し、申請制から、許可制にし、その運行料金も国の関与を強めて適正な運行が担保されるようにしなければならないと思います。


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