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罰則よりも十分な対策を

  • 2021年01月18日

 今日から通常国会が始まり、6月16日の会期末まで150日間、主にコロナ対策、20年度第3次補正予算(案)、21年度予算(案)、新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案(休業要請に応じない事業者に罰則を科す等)、デジタル改革関連法案(デジタル庁創設に関する法)、全世代型社会保障改革関連法案(一定収入の有る75歳以上の医療費窓口負担の引き上げ)、国家公務員法改正案(検察官を含む国家公務員の定年延長)などの法案が審議される他、吉川貴盛元農水相のアキタフーズ贈収賄事件、安倍前首相の桜を見る会前夜祭の公選法違反等の政治と金の問題も課題となります。

 このブログを執筆している段階で施政方針演説を聴いていませんから、それに対するコメントは改めて掲載しますが、この国会で多くの議論となるのが、感染症患者を受け入れない医療機関、時短や休業要請に従わない事業者、入院や調査に協力しない感染症患者などに罰則を科すという「新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案」です。

 この罰則を新設する措置法改正について医療系の136学会でつくる「日本医学界連合会(門田守人会長)」が14日、「罰則は倫理的に受け入れ難く、感染抑止も困難になる」と反対の声明を発しました。

 同連合会は①感染症の制御は国民の理解と協力によるべきであり、刑事罰や罰則を伴う条項を設けないこと②感染症を受け入れる施設の十分な確保を前提に、入院・入所の基準を統一し、施設間や地域間の格差をなくすこと③入院勧告や宿泊療養などの要請の措置を伴う社会的不利益への十分な補償④感染者とその関係者への偏見・差別行為を防止するための法的規制 を求めています。

 同連合は、過去に性感染症対策やAIDS(後天性免疫不全症候群)対策で強制的措置を実施した多くの国で、国民が刑事罰・罰則を恐れて検査結果を隠したり、検査を受けなくなったりし、感染状況の把握が十分にできなかったことを指摘しています。

 具体的な理由として考えられるのは、入院によって大幅な収入源を余儀なくされる場合の補償が無い。乳幼児がおり夫婦供稼ぎの場合、家族感染で夫婦揃って入院や入所した時に誰が面倒を見るのか。一人で親を介護している人が感染した場合はどうするのか。

 どの場合も、自身が入院・入所した場合の収入確保や家庭内での役割が果たせなくなること、勤め先や周囲からの偏見や差別に晒されることなど、それぞれの家庭が抱える事情は千差万別であり、これらの状況を解決すること無しに罰則だけ強化しても問題解決にはなりませんし、日本医学界連合会が指摘するように倫理的にも受け入れ出来るものでは無いことは明らかです。

 また、感染症患者を受け入れない医療機関も、名前の公表などの罰則を行うのは本末転倒です。これまで、全国の急性期病床を20万床削減することに血道を上げ、今もその方針を変えておらず新年度予算にも病床削減に195億円の予算を計上しています。

 何より、民間病院はECMOや感染症治療に使用する機材が必ずしも整っておらず、専門医師や熟練した看護師など人的資源も十分ではありませんし、感染症患者を受け入れる事により、一般傷病の患者の受け入れに影響が生じて経営が悪化するも懸念されますが、このことに対する手立ても十分ではありません。

 さらに、飲食店などの時短や休業に対する補償だけでは無く、事業持続化支援金や家賃支援給付金、雇用調整助成金などが2月ないし3月に終了するというのは、緊急事態宣言で協力を要請することと矛盾することになります。

 そのような中で、感染症患者を受け入れない医療機関、時短や休業要請に従わない事業者、入院や調査に協力しない感染症患者などに罰則を科すということは国民の理解を得られるはずがありません。

 まずは、GOTOトラベルなどが盛り込まれている補正予算を組み替え、上記のような課題に対して十分な対処をすることにより、感染症の減少に道筋を付けることが求められる対策ではないでしょうか。


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