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アイヌ新法

  • 2019年02月16日

 アイヌ新法が閣議決定し、衆議院へ提出された記事が掲載されました。

 しかし、その内容は、アイヌ文化の振興や啓発が中心で、これまでアイヌの方々が求めていた先住民族としての権利回復にはほど遠いものとなってしまいました。

 これまで、「先住民族の権利に関する国連宣言」の下、アイヌの方々は国連にも出向き、さらに各国の先住民族とも交流を深めてきましたが、そこには、各国が取り入れている先住民族政策を、日本が検討を進めている新たな法律の中にどのように組み込ませて行けるのかという1点に有り、そのためにどのようなロビー活動を行うかに尽きていたものではないかと思います。

 アイヌの歴史は、江戸期に松前藩がアイヌとの交易権を独占し、次第にアイヌの人々はその統制下で強制労働などを強いられ、明治に入ってからは開拓使により土地が収奪され、伝統的な狩猟や漁撈は禁じられ、さらに宗教儀礼も禁止、学校では日本語での授業が行われて言葉も奪われ、文化も同化政策により固有の生活様式も否定されました。

 被支配的立場に追い込まれて差別の対象となり、遺骨までが研究目的で収集され、未だにその一部しか返還されておりません。

 今回のアイヌ新法においても、これまでの歴史的経過や差別や格差を生んだ国の責任には触れずに、アイヌ文化の振興などが骨子となっています。

 国が進めている「アイヌ文化共生象徴空間(ウポポイ)」だけが前面に出され、アイヌ文化イコール観光振興策のようなことになりかねないのではないかと危惧します。

 菅義偉氏が閣議後の記者会見で「アイヌの人々に寄り添いながら、未来志向のアイヌ政策を進める。」と法案の意義を強調したそうですが、「寄り添う」という言葉が全く逆であることを私たちは知っています。

 「沖縄の皆さんと寄り添う」と言っては、県民の意向を無視した辺野古基地の建設を進め、「拉致家族の皆さんに寄り添う」と言っては、自らは一向に動こうとせず米国任せにしています。

 このことを見ても、「アイヌの人々に寄り添いながら」ということは、「寄り添う気持ちなど微塵もない」と言っていることに等しく、政府がアイヌ問題の根幹に迫る権利の回復を政策に盛り込むことを望むのは、それこそ八百屋さんに魚を求めるようなものではないかと思います。

 新法案では都道府県がアイヌ施策の目標などに関する基本方針を定めるように求めていますが、これについて高橋はるみ知事が「率先して策定しなれば行けない。アイヌ協会が求めてきた政策を中心に、記載することになるのでは」と語ったそうですが、この言葉を聞く限り、「私は引退するから、次の人は頑張ってね」としか聞こえまず、もはや人ごととなっています。

 アイヌとの関係が一番深い北海道は、率先してアイヌ協会が求めてきた権利回復を含む基本方針を策定しなければなりませんし、独自の条例制定も視野に入れるべきだと思います。


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