歴史の汚点、条例の再々提案(ブログ3959)
- 2025年06月30日
道の宿泊税の改正案が今定例会に提案されています。
この経過については、これまでもブログに掲載してきましたからご存じだと思いますが、これまで、道は「段階的定額制」で宿泊税を検討し、道内の宿泊関係者への説明会を実施、併せて、6年前から宿泊料金に2%を課す「定率制」を実施してきた倶知安町へ、道と同様の定額制に移行できないか協議を続けてきましたが、これまで、定率制を実施してきた経過や、とりわけインバウンドの富裕層が大半を占める客層から宿泊に関わる海外旅行エージェントへの説明が困難な実態にもあることから、道は倶知安町と同一の制度に統一して宿泊税を徴収することは困難と判断し、独自の条例案を昨年の12月、第4回定例会に提出しました。
しかし、このことにクレームを付けたのは、道議会与党自民党です。倶知安町が選挙区の道議の方が納得しなかったのかは分かりませんが、このままでは、与党が道の条例に反対する可能性が高くなることから、苦肉の策として、道は昨年の第4回定例会に提出し議会が審議を行っている最中に、条例案の改正を追加するという悪手を持ち出しました。
その改正案が、「定率制を導入した市町村(今後も倶知安町以外に現れる可能性も有ることから)は課税対象から除外し、市町村は道税相当額を道に交付する」という、第23条を加えるという内容です。これによって自民党も条例案に賛成(私たちの会派は、税収の使途が明らかではなく拙速に決めるべきではないと反対しました。)、無論、公明党も与党ですから、道は議会の過半数を得て条例は可決し、その後、倶知安町は、道への交付に充てるために2%の宿泊税を3%に引き上げました。
私は、「町が観光施策の充実のために徴収した目的税の一部を道に納めるという行為は、『地方財政法』上に問題は無いのか」と道に質しましたが、道は「問題は無い」という見解を示し、押し通しました。
さて、昨年の12月にこの条例が可決した後に、総務相の同意を求めるため、道の特定目的税として総務省に申請をしましたが、総務省の諮問機関である「地方財政審議会」が、条例に問題があるとして、
(1)適用除外規定について
○「税務行政のコストが低いこと」と「納税協力を得やすいこと」は、税の一般要件で
あり、その2つをもって地方財政法第6条の「公益上その他の自由」に該当するか、丁
寧に詰めていただく必要。この回答で法解釈として可能なのか、改めて再考された方が
よいのではないか。
(2)交付金について
○北海道宿泊税条例第23条で適用除外とする市町村は道が規則で指定するのか。
そうであれば、条例の委任の範囲か否かという話になる。また、指定する根拠として、
道と市町村の口約束の合意のみでは不十分であり、双方の宿泊税条例に「規定を設ける
など明確な根拠がいるのでは無いか。 と指摘。
私が心配していたように地方財政法上の疑義があると地財審も判断しました。
このままでは総務相の同意は得られないと判断した道は、追加した23条を削除し、「交付」を「納付」に代えて今定例会に再々提案、倶知安町にも「交付」を「納付」に代えて条例を改正していただきました。
道は事前に総務省と十分に相談できたのか、これに対し総務省は、「道の説明がコロコロ変化して何を相談したいのか理解が難しかった」と後日の調査で担当者が話をしていました。
道民にも新たな道税の負担を強いるという目的税なのに、当初からその使途についても曖昧だったにも関わらず、拙速とも言える鈴木知事の進め方は、道行政の拙速で稚拙な印象を総務省に与え、倶知安町と町議会に迷惑をかけ、さらに前代未聞とも言える道議会への条例案の再々提出という歴史の汚点を残す結果となったのです。
この顛末を知りながら道議会自民党は、今回の本会議の代表格質問でこの問題に一言も触れていません。最初にクレームを出して条例を再提案させておきながら、総務省地財審から問題ありと指摘され、道の再々提案という結果を招きながら、口をつぐんだままです。
そして、定例会最終日には、この汚点である宿泊税条例に与党は賛成をするのでしょう。